第3回 神と仏


神と仏

今回のシフトのヒントは、「祈り」について書いてみたいと思う。
ほかにいろいろ書きたいこともあったのだけど、今はどうもこれしか書けない。

日本人は神と仏を信仰してきた。
神と仏をいっしょにしている人もいるけど、神と仏は違う。

古来、日本において神は草木であり、石であり、海であり、山であった。
日本人は神を畏れ、敬い、祟らぬように祀ってきた。
それが日本人の最も大切な智慧だったんだな。

神は祀らねば祟る。
祀るとは、自然にむきあい、祈ること。
古くは神和ぎ(かんなぎ)といい「そこに宿る魂や命が、荒ぶる神にならぬよう」にと祈る。
神社とか、神道以前に、そういうメンタリティが日本人にあった。

自然の圧倒的な力に翻弄され、打ちのめされる一方で、
堅牢な石造りの家ではなく、木と紙の家に。

今回、津波の映像を本当に恐ろしいと思った。
僕はまるで知らなかった、ということを知った。
人間は完敗だ。お話にならない。勝ち負けですらない。

祈るしかない。

しかし、今、どれだけ神に祈っても、救われることはないのだ。
失われたものは、元に戻らない。
神は人間を救わない。時間は巻き戻されることはない。

では人を救うのは?
このことをずっと考えていた。
神は救ってくれない。

人を救うことができるのは人だけなのだ。
人は、人によって救われる。
神ではなく、人によって救われる。

人は人を救うができることを説いてきたのが、日本に伝わるもう一つの智慧。
仏教の伝えるひとの生き方だ。

人が人の行いによって人を救う。
あるいは人がそのこころの持ちようによって、救われる。
人の姿をして現れる仏のことを菩薩という。
人は人を助け、人を癒し、救うことによって菩薩になる。

僕は今、神と仏のことを思わずにいられない。

それは圧倒的な自然に対して畏怖し、謙虚であった先人の生き方を思うこと。
そして、人は人の心のやさしさや、行為によって救われる。
神のことを考え、仏を為す行い。
その一連のこころの動きを「祈り」というのだろう。

今回のシフトのヒントは「祈り」

すぐにやらなければならないこともあるけれど、
いますぐ出来ないこともたくさんあると思う。

これから10年、20年かけて生まれる新しい何か。
すでに種はまかれていて、それは「祈り」の気持ちで育っていくのだと思う。

谷崎テトラ

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第2回 世界のワールドシフトの動き


WorldShift20(WS20)宣言

今日はワールドシフトの世界での動きをお伝えしましょう。

アーヴィン・ラズロ博士からはじまったワールドシフトの運動はいま世界の様々な国にひろがっています。
各国それぞれ独自の動きをしているのですが、昨年11月21日香港でWorldShift20(WS20)という会議がおこなわれました。

The WorldShift-20 Declaration

WS20はアーヴィンラズロ博士の呼び掛けで集まった様々な文化と宗教をバックグラウンドにもつ20人の著名な地球市民によって成り立っています。
持続可能な社会にむけての国際会議で、いわばG20首脳会合のワールドシフト版といったものです。

「WorldShift20宣言」日本語訳公開!

日本からは田坂広志さん、西園寺昌美さんが出席、この会議で発表されたWS20宣言の策定には野中ともよさんも関わりました。
会議では70億人以上の人々が生活できる持続可能で平和な世界へ向け、地球規模で市民やメディアに注意を促すことを目的にWS20宣言が起草されました。

WS20宣言の全文の翻訳

内容は同時期にソウルでおこなわれたG20が経済成長によって問題を解決しようと考えるのに対して、それとは別の尺度を提示していこうという野心的なものです。
そのひとつが「Social Harmony Index」(SHI)という概念です。

Social Harmony Index

最近、GNH(国民総幸福指数)という考え方が注目されています。どれだけお金を生み出したかという経済指数のGDP(国内総生産)ではなく、どれだけ国民が幸福を感じることができているか、というGNHを取り入れようと言う動きが世界の様々な国で活発です。日本でも議論がはじまりました。
また温暖化の経済効果を数値化したスターンレヴュー、生物多様性を数値化するTEEBなど、経済成長と違った側面を数値化する試みも広がっています。

これは複数の指標によって、経済の方向性や社会のあり方を再定義する試みともいえます。

Social Harmony Index(SHI)は、さらに「平和」や「自由」「民主主義」など、総合的に環境と人々の幸福を社会が持つ責任の中に組み込んだ、新しい指標として提案されています。
環境について、兵器について、人権について、誠実さについて、自由について、民主主義について、情報の自由について、政府公務について、治安について、豊かさと貧しさのギャップについて、都市と田舎について、教育の大衆化について、国家の物理的な問題について、創造力について、社会保障についてなど、その他いろいろな全てのものを考慮し数値化していこうというものです。

SHIは世界中のあらゆる社会の持続可能性の評価、そしてその格付けをおこなうことで、世界の変化の方向付けをすることができると考えられます。
WS20宣言のなかでとくに注目したいポイントです。

 ところで、レポートのなかに「ダモクレスの剣」という表現があるのですが、あまりなじみがない表現なので補足しておきましょう。
これはギリシャ神話のシラクサ王ディオニソスにまつわる故事から。繁栄を極めた王の座の上には、剣が糸で吊るされており、その糸はいつ切れてもおかしくないという、そんな状態をさす言葉です。現在の世界は経済的な繁栄の中にあっても、一本の細い糸が切れたら破綻してしまうような危機的な状況であることをたとえています。

 この故事をひいて、1961年、ケネディ大統領は国連で、次のように演説したそうです。

「地球のすべての住人は、いずれこの星が居住に適さなくなってしまう可能性に思いをはせるべきであろう。老若男女あらゆる人が、核というダモクレスの剣の下で暮らしている。世にもか細い糸でつるされたその剣は、事故か誤算か狂気により、いつ切れても不思議はないのだ。」

谷崎テトラ

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第1回 ワールドシフトって何?


こんにちは

谷崎テトラです。

ワールドシフト。この言葉からどんな印象をお持ちになりましたか?

このコラムではワールドシフトのヒントとなるキーワードやアイデアについて書いていきたいと思っています。

連載第一回はまず「ワールドシフト」という言葉が生まれた背景についてお話します。このキーワードが発信されたのは、2008年のリーマンショックの直後のことです。アーヴィン・ラズロ博士を中心とするシンクタンク、ブダペストクラブがこんな宣言を発表しました。

『緊急事態にある世界情勢』

アーヴィンラズロ博士は70年代、ローマクラブのレポート『成長の限界』の作成などにかかわっていて、人口が増加し、工業化がすすんでいくことで、エネルギーの枯渇、環境破壊、気候変動、食糧不足や貧困問題がおこる可能性を早くから警告してきた学者です。近年は『カオスポイント』などの著書で現在の社会の問題点を指摘しています。

現在、ラズロ博士が『成長の限界』で予測された事態はさらに進行しており、生態系・経済・社会の分野で危機的な状況にあり、そしてそれらは複雑に結びついている警告しています。それらの危機に対して、それぞれの問題に個別に対応していくだけでなく、文明の発展の方向性を根本的に変えていくことが必要と考えました。そのキーワードが「WorldShift(ワールドシフト)」です。

「World」という言葉と「Shift」という言葉が結びつき「WorldShift」というひとつの単語が生まれました。

このキーワードを多くの人に知ってもらい、それぞれの活動に役立ててほしいというのがワールドシフトのネットワークです。

持続可能なライフスタイルを表す言葉としてロハスという言葉があります。

ロハスは環境で健康に配慮した生活様式ですが、その背景にあるすなわち消費文化をつくっている資本主義や貧困を生み出す社会のしくみ、開発の方向性から見直していくことが、求められています。その意味ではワールドシフトという言葉はロハスを含むさらに大きな概念ともいえます。

ワールドシフトはあらゆるセクター(行政・ビジネス・市民・個人)のレベルで必要な変革です。また、それぞれの立ち位置(リーダーの役割、専門職の役割、現場レベルでの役割、草の根の役割)で必要な変化でもあります。

そしてそれぞれの地域・現場での変化も必要でしょう。

たとえば、こんなことも言えるかもしれません。

  • ワールドシフト=文明そのものの転換
  • トランジションタウン=都市の転換
  • サステナブルストリート=町づくりの転換
  • エコビレッジ=村づくりの転換
  • パーソナルシフト=個人の転換

ひとつだけはっきりしていることは、「この世界はこのままでは持続不可能である」ということです。ラズロ博士の語る「ワールドシフト」とは「持続可能で平和な世界への変革」それは文明そのものの在り方の転換、価値感そのものの転換をあらわす言葉です。

今、環境は急速に変化しています。同時に人々の意識や価値感も急速に変化しています。コミュニケーションの速度が加速し、その質が変り、ひとびとの「つながり方」が変ってきました。情報をやりとりするだけでなく、より深く有機的な交流が創発的に起きはじめています。変化は分散的に、それぞれのパーツとして起きてきていて、そのロードマップの全体像をまだ誰も見ることができていないのかもしれません。

そんなプロセスのなかで「ワールドシフト」という言葉は、大変勇気をあたえる言葉です。変化をおそれず進むことで、その方向性を指し示し、意図的に未来を創造していく力をあたえています。

このWEBサイトもすべてボランティアの手によってつくられています。創発的にアイデアが生まれ、「共有地(コモンズ)」をひろげるように。本の印税もこの運動を広げるためにのみ使われます。そんなことがごく自然な出来事のようにはじまっています。

ワールドシフト。この言葉からどんな直感が働きましたか? みなさんは、どのように感じましたか? そして、皆さんだったらどのようなアイデアで実現することができると思われましたでしょうか?またそのための課題やチャレンジは何でしょうか?

この言葉からはじまるアイデアやアクションをサポートするために、ワールドシフト・ネットワーク・ジャパンが立ち上げました。ワールドシフトを宣言し、行動する仲間がつながり、持続可能な社会のための考え方や具体的行動を共有するプラットホームをめざします。そして変化のために行政・企業・市民が連携することや、個人をエンパワーしていくことを目的としています。

みなさんの意見をお聞かせください。どうぞ、ワールドシフトという言葉を聞いたときの最初の感覚を大切にしてみてください。

この言葉に直感した、個々の行動がシフトの主体です。シェアしていきましょう。新しいルールのもとで、具体的なアクションをおこしましょう。

「ワールドシフト」というこの言葉は、それぞれ持続可能な社会への行動やアイデアに新しい名前を与え、その背中を押してくれるのではないかと確信しています。

今日はここまで。次回からそれぞれの分野でのワールドシフトのヒントとなる事例やキーワードを紹介していきたいと思います。

谷崎テトラ

構成作家&音楽家。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事、地球サミット2012準備事務局スタッフ、愛知県立芸術大学非常勤講師。谷崎テトラオフィス代表。TV・ラジオ・Web番組や出版の企画など、様々なメディアを通じてパラダイムシフトの提案をしている。地球温暖化防止レインボーパレードやアースデイTOKYO、などの環境保護アクション、BeGood Cafeなどの社会起業に参加。世界のエコビレッジの共同体デザイン、パーマカルチャー(持続可能な農的文化)などの実例から、先住民から学ぶディープエコロジーの思想まで、未来のデザインのためのコンテンツを提供している。また世界の聖地をめぐり収録した自然音や、アンビエント音楽を制作。地球を感じる作品をつくりつづけている。主な企画・構成はテレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」やTOKYO FMデイリープラネット、WorldShift Radioなど多数。

テトラノオト(Blog)

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