Worldshift20宣言
基本的な前提(Basic Premises)
先進国のリーダーたちは、ブレイクダウンに向かっている世界に対して努力はしているが、それは現状からみると満足とはとても言い難い努力です。ブレイクダ ウンは望まれるものではもちろんありませんし、当然無視することもできないものです。経済、政治、社会組織のシステムと人類と自然とのエコロジーな関係は いますぐに再構築しなければならず、そのときに重要になるのが持続可能で平和な世界をめざす「意識」「価値」「原則」なのです。そのような大規模な転換を 開始するために残されている時間は、ここ数年という限られたものと思われます。
しかしながら国際社会は、大きな会議において自分たちの組織の利害や権限にこだわるという「セクショナリズム」に囚われています。経済を主導する交渉者たちは、過去から引き継いだ議題を持ち出しているのです。
このような姿はG20のソウルサミットで明らかになりました。この時の宣言には世界でもっとも力のある20カ国による緊急レポートが発表されました。国際社会における福祉や福利についての協議よりも、経済が取り上げられていました。
貿易や為替レート対策の不平等、財政危機の脅威。これらの問題が注目を集めるようになった結果、気候の変化や地球規模での生態、地球人口の半分が抱えてい る貧困問題への注目が少なくなりました。さらには、世界でも有力な政府・企業が占めている富や消費性向についてはいかなる注意も払われませんでした。
G20は経済成長によって問題を解決できると思っているようです。ですが、これは福利と、世界に多くある貧しい人々の生存を危機にさらし、さらに、地球の 気候を変化させ生態系を破壊しています。これでは持続不可能な経済体制を加速させるだけです。迫りくる気候、エコロジー、エネルギーそして核の脅威。これ らの問題は経済措置という対応だけではとても解決できません。そもそも分離して考えることが可能な問題ではないのです。
私たちの子どもや孫の世代が平和に、また命を支えてくれる生態系とともに暮らせるように。そのために社会全体の構造改革が必要です。私たちは生態学的、そ してエネルギー的に持続可能であるように社会を組みなおす必要があります。また、地球温暖化、核兵器という二つの大きな人類の存続に対する脅威について真 剣に取り組まなければなりません。
このままでは、地球温暖化によって引き起こされる気候変動は人類の力では維持できない深刻な状況を引き起こします。ここから生まれる問題は容赦なく、この 先100年で大災害、蔓延する伝染病、人同士の争い、いまだかつて人類が行わなかったレベルでの人口移動(気候変動から逃れるために何百万、何十億の人々 が大陸移動を行うことになるでしょう)などが起こるでしょう。その結果として戦争が引き起こされ、人類の80%以上が滅びると予想されます。イギリスの科 学者であり環境学者であるジェームズ・ラブロックのレポートは人々の目を覚まさせ、緊急の行動を促すものなのです。
環境問題と同じく、核兵器の廃絶も今となっては願望ですまされるような問題ではありません。人類の存続に関わる問題なのです。核兵器の問題がある限り、平 和な世界の実現は不可能だと言えます。あらゆる状況下での核兵器の製造と使用が禁止される核兵器禁止条約の成立は緊急の問題です。全生命を滅ぼすような大 量な核保有に対する恐怖。この恐怖に人類が気づけば、民主主義において禁止条約を成立させることは十分可能です。そして、気づきはすでに始まっているので す。5大核保有国を含む21カ国において、世論調査によると国民の76%が全ての核兵器を禁じる条約の交渉を支持する、という結果が出ています。
とはいえ、抵抗勢力は以前強く存在します。核兵器は力であり、政府は力の源泉としての核を手放したくはないのでしょう。軍や関連した産業は市民に恐怖を押 し付け、核保有の正当性を主張しています。主要メディアはこの問題について見て見ぬふりをしています。これでは、常に身に付きまとう核の脅威、ダモクレス の剣のようなこの脅威を打ち消すことは難しいのです。
オルタナティブな哲学(An Alternative Philosphy)
意識的なリーダーシップ(A Conscious Leadership)
この地球の文明が存続するために、もはや無駄にできる時間は残されていません。聡明で賢明な指導者を選択することは人類の責任なのです。また、適切なグローバル原則の尊重により、社会構造の生存性を未来へと保ち、前進させていくことは指導者の責任です。
今日、社会のあらゆる階層において、決定権を持つ人々にリーダーシップの自覚が求められています。国家の政治リーダーたちは反対勢力をも協働に導く力が必 要です。すでに起こっている変化へ舵取りするために、人類の内的な可能性を外的な課題に向かわせなければいけません。つまり、心理学的、生物学的、社会 的、文化的、そして環境的な要因を考慮に入れた総合的な解決に向けての能力を育てることが必要なのです。問題に協同で取り組むことを可能にするための、文 化的で、行動的、社会的、情緒的な知性を含む新しい能力が必要です。
人類は新しい方向に向けて協同で取り組むための努力ができます。地球規模での企業システムはブレイクスルーを創りだすことができます。ガバナンスに対する 新しいアプローチはあらゆる社会から、多数の参加者を巻き込むことができます。ビジネスというものは人がいてはじめて意味を持ち、世界の文化を繁栄への新 しい段階へと進めることができるのです。意識的なリーダーシップを通じて、個人と世界のニーズを密接につなげることが可能になります。
「この病める世界において、豊かでいるためには何が必要なのだろうか?」先進国のリーダーたちはこの重要な質問に答えられるのでしょうか。G20のリー ダーたちは枯渇したこの地球を消費し、自分たちの富を増やすことを優先するのではなく、続く次の世代へ住みよい地球を残すことに焦点を当てるべきなので す。経済は、あらゆるレベルにおいて平和で公平で持続可能で健全である必要があります。世界中が精神的に健全であることで、人類は団結しバランスの取れた 生態系を取り戻すことができ、世界規模の問題を根絶し、そして軍事的侵略を抑止できるのです。
グローバルな思考だけが、問題を終わらせることができますが、延々と続く国家主義と部族主義がその考え方に歯止めをかけています。ですが、たとえ私たちが 一つの種族でないとしても、同じ地球に住んでいるということは変わりがありません。この地球が死んでしまうのは時間の問題です。この事実に気がついたと き、それは世界の回復のためのチャンスでもあるのです。たとえば、人類は徹底的に枯渇した世界で生き延びることはできるかもしれません。ただし、そのよう な世界では「人として」生きることはできないのです。
新しい意識(A New Consciousness)
人類は「どこへ進むべきか」を知るために、今まで知っていたすべてのことを一度捨てる必要があります。アインシュタインが「ある問題を引き起こしたのと同 じマインドセットのままで、その問題を解決することはできない」と言っていましたが、新しい意識のみが問題解決を可能にするのです。つまり、人間性のすべ てにおいて新しい意識の誕生が必要なのです。
人類に影響する多くの脅威はすでに現実化しています。それだけでなく、さらなる脅威も訪れようとしています。すべての脅威は共通の問題を持っています。そ れはすなわち「惑星意識」の欠如です。人類は自分たちと生態系の両方をまとめて見るという視点を欠いています。民主主義の中では、多数派がルールを決め、 決定します。惑星意識を持った人はまだまだ少数派なのです。
人類は連帯感に基づいて、変化に向かい適応するための協力が必要だと認識しなければいけません。それが持続可能で平和な世界への基本的な前提条件です。
経済や金融の領域だけでもなく、環境、技術、教育、情報公開、文化の交流などすべてにおいて協調の重要性について気づくこと、そして活気づける意識が必要 です。地球上すべての人々との相互関係、一体性、運命についての共通認識について明確に意味をとらえていかなくてはならないのです。
G20の指導者たちは、狭い意識レベルでのコミュニケーションの故に、古くから続く問題を終わらせることができずにいます。環境に対する感謝の欠如、動物 や惑星の生活、自然世界を搾取するような扱い。そして人間、文化、国家間での差別。この3つの差別は指導者たちの考え方だけから生まれているのではなく、 何十億もの人類ひとりひとりの意識からも生じているのです。リーダーシップの役割があろうとなかろうと、意識を高め、それによって人間社会の未来と地球を 守るという責任を取ろうとする地球市民の努力をサポートしなければなりません。
パブリックセクターのリ・オリエーテーション(Re-Orientation in the Public Sector)
『成長の限界』は1972年の発表以来、世界中で多くの出来事や動きに警鐘を鳴らしました。ですが、それでも地球への状況は良い方向には変わっていかな かったのです。国連やG20のような権威のある多くの組織が変化を生みだし、NGOや市民グループがそれを実行していきました。ただ、これらのアクション はいまだ効果的ではありませんでした。
惑星意識を広げ、共有するためにも具体的なアクションプランが、宇宙船地球号の乗客である人類には今すぐに必要なのです。 民族国家が自分たちの経済の「回復」「安定の継続」「バランスの取れた成長」を求めるという時代遅れの考え方を捨てなければいけません。持続不可能なシステムを活性化しようとするのではなく、現在のシステムの徹底的な転換が必要なのです。
政府やNGO、ブレイクスルー、つながりを伝播する市民社会。この間にある協力関係に基づく新しい社会のシステムが必要です。それは創造的で、全体的な変 化を起こすことのできる社会的相乗効果と協力を高めるという新しい機能を持ちます。現在では、インターネットを使うことで、入念に調査することができ、世 界や各国そして地域社会ごとに起こっている出来事のつながりを広めることができます。
2009年12月コペンハーゲン会議は、政府組織が国家や共同体の利益を超越し危機的な地球問題を客観的に扱うことは不可能であることが示されるという大 失敗に終わりました。世界的な危機は人間精神の包括的システムの危機である、ということが理解されていなかったことがこの悲劇を引き起こしました。人間の 精神性を無視し、経済のためにあらゆるものを犠牲にし続けるのならば、世界はブレイクダウンへと向かって負のスパイラルに陥ってしまいます。
G20はこの視点を変えることはないでしょう。人類は精神性が意思決定の問題において優先されるという時代にいます。世界のリーダーたちは、意思決定のプ ロセスが経済や政治よりも精神性によってなされるという原則にコミットすべきです。そしてリーダーたちは、惑星がひとつのシステムであると認識し、世界の 利益についての意思決定は人類の未来を犠牲しないものにしなければならないのです。
人生に対する深い意義、状況、周囲の環境に依存しない内的な喜び、他者への配慮や思いやり、そういったことへの発見に対して幅広いサポートを行うのはリー ダーにとっての原理原則です。調和と共同体を大切にし、お互いが自由に生きていくことのできる世界。欲望や恐怖ではなく、知恵や思いやりによる統治がなさ れる世界を共に創っていくことが必要なのです。
政府は精神性についての概念全体が、グローバル社会という文脈の中で再定義される必要があるかどうか、を検討しなければなりません。精神性は人種、宗教、 性別、国籍の壁を超えるグローバルコミュニティに最も適した概念です。人類はグローバリゼーションの挑戦と危機に対処できるようにするための確かな普遍的 概念を考え直す必要があります。これらの概念の多くは人間らしさの中にあります。こういった概念を現代の文脈に沿って再確認する必要があります。
緊急に整備しなければいけない制度(Urgent Institutional Steps)
各国は、このチャレンジに一丸となって動かなければいけません。すべてのエリアにおいて実行しなければいけないことは二つあります。ミレニアム開発目標に 向けての事務局を設立すること、目標実現へ向けての進捗状況を確認しあえるシステムを確立するということです。資本は結果ではなく、ゴールへ向かっての手 段です。すべての権利は守らなければいけません。個人の権利、生態系が持つ権利をないがしろにしてはいけないのです。命はそれだけで、神聖なもので、大切 にしなければいけないのです。
私たちは、富の尺度のすべてのレベルにおける人間の興味だけではない、環境と人々の幸福に照らした適切な尺度を確立しなければいけません。国家は、普遍的 な考え、自然との調和に基づいた価値、州やグループで共有された関心、法律、そのすべてとバランスを取らなくてはいけません。
今、世界中のあらゆる国でSocial Harmony Index を作る必要があると考えます。Social Harmony Indexは、環境について、兵器について、人権について、誠実さについて、自由について、民主主義について、情報の自由について、政府公務について、治 安について、豊かさと貧しさのギャップについて、都市と田舎について、教育の普及について、国家の自然環境状態について、創造力について、社会保障につい てなど、その他いろいろな全てのものを考慮し数値化されます。Social Harmony Index(SHI)を集めることで、世界中のあらゆる社会の評価、そしてその格付けを知ることができます。そして、すべての国のSHIをまとめること で、World Social Harmony Index(WSHI)を知ることができ、これは年々の変化のパターンを教えてくれます。これらのリストは、毎年、国連もしくはG-20によって評価、と りまとめられ再発行される必要があります。WSHI は世論として政府に影響を与え、各国の開発の基準になります。あらゆる国は今、SHIに注目し、GDPによる競争を弱めるべきなのです。 人々の利益は健康的な生態系、堅実な財政、そして盛んな地域社会によって保たれます。つまり、資本市場の枠組みをもう一度組み直し、再び信頼を得るという ことが一番の優先事項なのです。
緊急に実行しなければいけない事項:
- 財政の民主化と、改革についてのより深い討論(この討論はすべてのステークホルダーと専門家を含めて行う)
- 世界の財政のコモンズとしての再構築
- 社会的科学、生物科学の広範な領域におけるブレークスルーに啓発された経済理論の構築
- 公正なアクセスと人間の成長機会において、分割できない非競争の公共財やインフラの配分のためにマーケットをデザインするという、コモンズアプローチ
- 気候の安定と公正なツールの制作という私たちの共通のニーズに関する、多くのイノベーションに光を当てること
- エネルギーへのソリューションは、再生可能な新しいエネルギーにはなく、エネルギー効率の研究にあるかもしれません。原子力の使用を避け、石炭など再生不可能なエネルギー、新しいエネルギー資源に頼らずに済みます
- 金融システムが、繁栄し持続可能な人類の未来に貢献する世界ビジョンの構築
- 金融市場の相互依存性が公正で安定し持続可能であるようにしなければいけません。この文脈において、必要なことは、より成熟した「目に見えない」資本主義の形にシフトすることです。ここでいうシフトとは以下の事項になります。
- 機械的なコンセプトに基づいた「操作主義経済」から、生命システムに基づいた「複雑系経済」へのシフト
- 目に見えるものにもとづく「知識経済」から、次の世代を見据え信頼と感情にもとづく「共感経済」へのシフト
- 「貨幣経済」から主要な経済原則としての「ボランタリー経済」へのシフト
- 「享受型経済」から市民の真の声を反映する「参加型経済」へのシフト
- 「無限成長経済」の幻想から、「地球環境経済」の現実へのシフト
これらのための全体システムアプローチは、人類の歴史の中で最も重要で時間がかかります。これから先の数年に行われる決定事項が、今後人類にとって成長す るか否かの分かれ道です。138億年間にわたる人類の命がこの一世紀、ないしは二世紀で決まるのです。世界がいま必要としているのは社会にとって平和で情 熱的で効果的な働きかけです。そして、必要なのは平和で情熱的で有能な人々、つまり求める社会に適した人々です。リセットボタンはもう押されました。人類 はこれ以上今までと同じような贅沢を続けることはできません。今、地球のために動かなければなりません。かつてなかった社会的な大きな変化に取り組む情熱 が必要なのです。
今までの脅威(人類による自然に対しての敵意も含めて)の時代は終わり、人間らしさとその文化を尊重する新しい時代が訪れようとしています。この変化を乗り越えるために、全人類の可能性とあらゆる叡智が力を合わせる必要があります。
これは大変な変化です。世界を大きく変える曲がり角なのです。悲しいことに今、人類は文化から生まれた経済ではなく、経済学のおまけのような文化しかない という状況にいます。事実、人間が設計し、導入した経済とガバナンスシステムがどれだけ文化の創造を妨げているでしょうか。国家のリーダーが柔軟で協力的 ではなく、古い考えのまま門番のように残っています。
「持続可能で平和な世界」という目標は、人類史上はじめて達成することができるものなのです。現在、多くの優秀な女性が意思決定の立場にいます。また、コ ミュニケーション技術の発達で遠いところにいる人たち同士がつながることが可能になっています。そうです、今なら人類は夢見た世界を現実にすることができ るのです。
Worldshift 20 Council Members
- Jose Arguelles (USA/Mexico)
- Deepak Chopra (USA/India)
- James Garrison (USA)
- Jonathan Granoff (USA)
- Hazel Henderson (USA)
- Jean Houston (USA)
- Barbara Marx Hubbard (USA)
- Min Jiayin (China)
- Ervin Laszlo (Hungary/Italy)
- Federico Mayor (Spain)
- Edgar Mitchell (USA)
- Tomoyo Nonaka (Japan)
- Paul Ray (USA)
- Douglas Roche (Canada)
- Marco Roveda (Italy)
- Peter Russell (UK/USA)
- Masami Saionji (Japan)
- Marilyn Schlitz (USA)
- Karan Singh (India)
- Hiroshi Tasaka (Japan)
Worldshift 20 Council Administration
- David Woolfson, Coordinator (Canada)
- Carl Carpenter, Web Administrator (USA)
